生活習慣病と睡眠
生活習慣病に欠かせないこと、それは食事もそのひとつですが、睡眠も大切なことです。
最近、よく眠れていますか?
快適な睡眠が取れていない人は、体の不調を訴え、病気になりやすい傾向があるようです。
睡眠不足だと、身体は疲れたままで、仕事も満足にできず、免疫力が低下し、風邪をひいてしまったり、倒れてしまうようなことがあります。ですから、生活習慣病などにかからないためにも、睡眠をたっぷりとるということは、とても大事なことだと言えるんです。
生活習慣病と睡眠障害
「眠れない」という日本人は、どれだけいると思いますか?
厚生労働省が行った調査では、日本人の2割の人が、「眠れない」といった不眠に悩まされているんです。さらに、女性では、20.5%!男性では、19.6%の人が、しっかりと眠れていないのです。そして、調査の結果では、中年から高齢にかけての年齢層で、どんどんその割合が高まっているのが現状です。
不眠の理由は、悩みやストレスが1番多く、約3割もいます。これからは、生活習慣病にならないようにするためにも、睡眠のための知識をしっかりと持ち、自分自身の健康管理をきちんと管理することが大切になるのです。睡眠障害の診断・治療のためのガイドラインを見てみましょう。
睡眠障害の診断・治療のためのガイドライン(厚生労働省より)
1:睡眠時間はひとそれぞれ。日中の眠気で困らなければ十分。
もともと、睡眠時間の長い人、短い人、季節が変われば睡眠時間も変化するので、8時間にこだわらないほうがいい。
日中の眠気が非常に強かったり、平日に比べりると、週末に3時間以上長く眠らないと具合が悪い場合は、睡眠不足が原因かも?
歳をとることで、若いときとは違い、必要な睡眠時間が短くなり、70歳を過ぎると平均6時間弱といわれています。
2:刺激物をさけ、眠る前には自分なりのリラックス法を。
就寝前の4時間は、カフェインの入っているものを避け、就寝前1時間のキツエンは避けるようにする。
寝る前の軽い読書やゆったりとした音楽を聞くこと、ぬるめの入浴をすること、アロマなどの香りでリラックスすること、軽い運動なども効果があります。
3:床につくのは眠たくなってから。就寝時間にこだわらない。
眠ろうとする意気込みは、実際には、頭を冴えさせ、寝つきを悪くし、眠気をなくしてしまうことも。
いつもの入眠時刻の2〜4時間前は、1日でもっとも寝付きにくい時間帯だといわれています。
4:定刻に毎日起床。
早寝早起きという習慣をくずさないというわけではなく、早起きをすることが、早寝につながります。
日曜に遅くまで起きていたりすると、月曜の朝がつらくなります。早めに寝るように心がけることです。
起床後は、カーテンを開け、一早く太陽の光を浴びることが、夜ぐっすりと眠れます。
5:光を利用。目覚めたら日光を入れ、夜の照明は控えめに。
目が覚めたら、カーテンを開け、日光を取り入れ、体内時計に刻みます。
起床後、太陽の光を浴びてから、約15時間経った頃に、眠気が訪れるようです。
夜の眠る前の照明は明るすぎないものを選びましょう。
6:規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣。
朝食は、心と体の目覚めにとても大切なこと。夜食は、軽めにしましょう。空腹で寝付けない時は消化の良いものを少量だけとるように。
毎日の運動習慣は、毎日の快眠が得られます。
7:昼寝をするなら、午後3時前の20〜30分。
長い昼寝は、集中力がかけてしまうので、短い時間で。夕方以降の昼寝は夜の睡眠に悪影響。
8:眠りが浅いときは、睡眠時間を減らし、遅寝・早起きにしてみる。
寝床で長い時間、過ごしてしまうと塾睡した感じがなくなります。眠くなってから、寝床に入りましょう。
9:激しいいびき、呼吸停止、足のぴくつきやむずむず感などは要注意。
睡眠時無呼吸障害などといった、睡眠の病気の可能性がありますので、専門治療が必要です。
10:十分眠っても日中の眠気が強いときは専門家に相談。
長時間眠っても日中の眠気で仕事・学業に支障がある場合は、睡眠の病気の可能性がありますので、専門医に相談しましょう。
車の運転に注意が必要です。非常に眠い状態では、作業ミスが起こりやすく、交通事故のリスクは約2倍。
11:睡眠薬代わりの寝ざけは不眠のもと。
睡眠薬代わりの寝ざけは、睡眠時間を減らし、夜中に目覚める原因となりやすい。
毎日だと、急速に量が増え、精神的・身体的問題が起こりやすいので注意です。
12:睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全。
一定時刻に服用し就寝。服用後はおよそ30分以内に床につきましょう。
おさけと一緒には飲んではいけません。
生活習慣病と眠い病気
眠い病気は、総称すると「過眠症」と呼ぶことが多いようです。 次のような種類があります。
●ナルコレプシー
●睡眠時無呼吸症候群
●反復性過眠症
●特発性過眠症
●むずむず脚症候群
●周期性四肢運動障害
●概日リズム睡眠障害
聞いたことのない病気が多いですよね。 ちなみに、過眠症の定義ですが、日中に過剰な眠気または実際に眠り込むことが毎日の様に繰り返して見られる状態で、少なくとも1ケ月間は持続し、そのため学校生活、社会生活、職業的機能が妨げられ、あるいは自らが苦痛であると感じるものです。 ただし一回の持続期間が1ヵ月より短くても繰り返して過眠期がみられるものも含みます。
●ナルコレプシー
代表的な過眠症のひとつです。居眠り病とも呼ばれ、思春期から青年期に多発します。耐えることができない突然の眠気に頻繁に襲われる病気です。その眠気は強烈で、1対1で商談をしているときや食事をしているときなど、通常では考えられないシチュエーションにおいてさえも居眠りをしてしまいます。眠気だけでなく、金縛りや寝入りばなの幻覚、大笑いしたり得意になったり興奮したりしたときに筋肉の力が突然抜けてしまう発作(情動脱力発作)などの特徴的な症状が出現します。
●睡眠時無呼吸症候群
ナルコレプシーと同様に代表的な過眠症です。睡眠時無呼吸症候群には閉塞性と中枢性がありますが、患者数が多く社会的にも問題となっているのは閉塞性睡眠時無呼吸症候群です。大きないびきが特徴で、睡眠中に呼吸が止まる無呼吸状態を何度も繰り返すため、睡眠の質が悪化し、慢性的な疲労感と日中の眠気に悩まされます。
●反復性過眠症
周期性傾眠症ともいいます。多くは青年期に発症し、過眠(傾眠)状態が昼夜を問わず数日間から数週間程度続く状態を繰り返します。傾眠期に過食をともなうクライネ・レビン症候群や月経の周期に一致して起こる月経関連過眠症という亜型があります。
●特発性過眠症
主な症状は日中の眠気です。典型例では、昼間が1時間以上持続することが多く、目覚めたときに頭がぼんやりした状態が持続します。情動脱力発作は起こりませんが、立ちくらみや四肢冷感などの自律神経症状を伴うことがあります。主睡眠が10時間以上に延長した上で日中の眠気が生じる長時間睡眠型と正常範囲の睡眠で日中の眠気が生じる非長時間睡眠型があります。
●むずむず脚症候群
夜、安静にすると、主にふくらはぎなどに「むずむずする」「虫が這うような不快感」などの表現し難い異常感覚が起こります。そのために、じっと寝ていることができなくなります。脚をたたいたり、歩き回ったりして動かすと、違和感が改善するという特徴があります。夜中に目覚めたときに違和感が生じて寝付けなくなることもあります。このような原因で睡眠不足が続くため日中に眠気が起こりやすくなります。
●周期性四肢運動障害
夜間ミオクローヌスと呼ばれていた疾患です。睡眠中に手足、特に下肢にピクンピクンとする不随意運動が周期的に出現します。このために睡眠が妨げられ、日中の眠気が起こりやすくなります。本人が気づかないうちに脚が動いてしまって眠りが浅くなっている場合もあります。寝相が悪い場合は要注意です。加齢により発現頻度が高まります。
●概日リズム睡眠障害
体内時計の狂いによって生じる睡眠障害を称して概日リズム睡眠障害といいます。1日の覚醒と睡眠のリズムがずれるので、日中に過度の眠気が生じたり、真夜中に目がさえてしまうなどの障害が起こります。睡眠・覚醒リズム障害、サーカディアンリズム睡眠障害ともいいます。
◇交代勤務睡眠障害
交代勤務労働者、パイロット、医師・看護師、長距離ドライバー、警備員、夜間の飲食店従業員など昼夜逆転して働く、あるいは昼夜を通して働く人々は体内時計のリズムに逆らった生活を余儀なくされています。体内時計のリズムと覚醒・睡眠の生活サイクルのずれにより、過眠や不眠の症状が出現します。また、不規則な就業形態による睡眠不足も睡眠障害の原因となります。
◇睡眠相前進症候群
体内時計が何らかの原因で進んでしまうため、覚醒と睡眠のリズムが早い時間帯のほうにずれてしまう病気です。したがって、夕方になると眠気が生じ夜の早い時間帯に就寝してしまい、早朝に目覚めてしまいます。
◇睡眠相後退症候群
体内時計が何らかの原因で遅れてしまうため、覚醒と睡眠のリズムが遅い時間帯のほうにずれてしまう病気です。したがって、明け方近くまで寝付けず、いったん眠ると昼過ぎまで目が覚めないという状態に陥ります。
◇ジェット時差症候群
5時間以上の時差のある地域にジェット航空機で移動した際に、現地時間に対して不適切な時間に眠くなったり覚醒したりする睡眠障害をいいます。一般的に、時差ぼけとも呼ばれています。
◇非24時間睡眠・覚醒障害
正常な場合では、体内時計は朝の光刺激に同調して1日を24時間と認識し毎日規則正しい覚醒と睡眠の周期を作ります。ところが本疾患では、朝に目覚める手がかりがなくなり、覚醒と睡眠の周期が生体が本来もっている25時間近くの状態のままになり、毎日の起床時間と就寝時間がおよそ1時間ずつ後ろにずれてしまいます。このために、自らの意思で規則正しい生活を送ることができません。
●身体疾患や精神疾患に伴う日中の過眠
身体疾患や精神疾患の症状として様々な睡眠障害が起こります。日中の眠気を起こしやすい代表的な病気としてうつ病やパーキンソン病があります。うつ病では、特に季節性うつ病で日中に強い眠気が生じやすいと言われています。季節性うつ病の発症には日照時間が影響しているため、体内リズム(概日リズム)の乱れが眠気の原因になっているかもしれません。そのほかにもパーキンソン病などの脳変性疾患では、症状が進行すると日中に強い眠気が生じやすくなることがあります。
●薬の副作用
抗ヒスタミン薬、抗てんかん薬、抗精神病薬など多くの薬の副作用として眠気が伴います。
●不適切な睡眠衛生
日常生活の中で過眠や不眠などに陥らないように規則正しい生活をし、十分な質の高い睡眠を得るように心がけ実行することを睡眠衛生といいます。睡眠の質や量の向上を目的とした入眠方法や睡眠環境の整備、さらには覚醒環境が睡眠に及ぼす影響を明らかにしてその対策を講じるという広い意味でよく用いられる用語です。例えば、寝室環境やコーヒー摂取なども睡眠衛生の範疇です。この睡眠衛生が不適切なものになると、過眠や不眠などの睡眠障害が起こります。
このように、眠い病気の種類も多いのが特徴的です。
ただ、これらの症状があったとしても、過眠症であるという結果がでるまでに、長い年月がかかる場合が多いようです。
実際に、過眠症の方々は、そんな都合のいい病気などないと言われることも多いようです。原因もまだまだわからない状態であり、悩んでいる方は、多いです。
そういった病気があることをよく知ってもらうことも大事かもしれませんね。
どちらにしろ、生活習慣をしっかりコントロールし、快適な睡眠を得られるように努力することが、治療の第一歩のようですので、生活習慣を改善していきましょう。